経絡って⁉
「ここがツボ‼」と皮膚を押して、「うーん、たしかに‼」と患者さんに言ってもらう。この様に、ツボはお互いに実感を共有しやすいです。しかし、経絡(ケイラク)というものは中々こうはいきません。
古代中国で見出された “気や血の巡る通路” とされているのが経絡です。「血管やリンパ管は現代医学でも証明されているし、何より血管は目で見える!でも経絡ってなんだかよくわからないワ」なんて人も多いでしょう。分からなくて当然と思います。なぜなら、東洋医学的な身体の見方が、現代の視覚的かつ科学的根拠を重視する見方と違うからです。その転換点はどこか。
それは、歴史の教科書にも出てくる杉田玄白が、実際に人体の解剖をしたくらいでしょう。解体新書の中身は学校の教科書にもチラりと載っているかも知れませんが、東洋的な人体観の絵が教科書に載っていることはまず無いでしょう。百聞は一見にしかず、最早古の東洋人の思いを描いた身体の内を見てみましょう。(図1)

図1:『内景図』(北京・白雲観所蔵)
これは『内景図』と呼ばれる、中国の道教徒に伝わる絵です。日本の鍼灸は歴史的に中国からの知識や技術を大いに吸収しており、似た絵も日本で書かれています。山があり谷があり、水車もあり、なぜか人も居る・・・現代の私達から見れば、ファンタジーもいいとこ、と思えてしまうかも知れません。何故この様な考えに行き着いたか。それは自身を取り巻く外界を大宇宙、人間の体内を小宇宙とし、大宇宙に在るものは、人体である小宇宙にも存在すると考えたからです。そして、その宇宙を構成する要素として「木・火・土・金・水」が存在すると考え、すべての事象を五つに分類しました。(図2)これを五行と呼び、それぞれのエネルギーの流れが、私達のからだの中にも循環していることを表したのが、経絡というものになります。
病気は、この五行の循環の不調であると考えられています。身体のどこに歪みがあるか、どの経絡に気や血の滞りがあるのかを見立て、指圧・鍼灸・漢方治療によって症状の緩和や消失を確認しながら臨床を積み重ねています。
先人達が、今のコロナ禍や自然災害をどう見るだろうか?と想像しつつ、考え続けていくことが、東洋医学の温故知新だと思っています。

図2:『五行』参考文献より
さて、経絡も実感できる方法が幾つかあります。一番簡単なのはストレッチで、増永静人(※)という日本の指圧師が、治療者と患者さんが経絡を実感できる方法として、“経絡体操”というものをまとめています。この経絡体操ですが、体育で行うストレッチとは違うコツが三つ程あります。一つ目は、反動をつけてギュッと伸ばさないこと。身体の重みを使って気持ち良く伸びるように行いましょう。二つ目は、息を止めないこと。身体の重みで伸ばされたスジが、吸う息によって更に伸びていくのを感じられるくらいに呼吸を深くしましょう。三つ目は、筋肉という短いものでなく、経絡という長いラインをイメージすることです。
具体的な体操と、伸ばす経絡をインスタグラムで紹介していますので見てみてくださいね。
(※)増永静人(1925~1981年)
全身十二経の経絡走行を臨床的に体系化。「経絡指圧」を考案。広く海外においても経絡指圧を指導、普及につとめた。1968年「医王会」設立。主な著書に『スジとツボの健康法』『経絡と指圧』『病気を治す指圧入門』
〈参考文献〉.
増永静人『接診の手引』医王会指圧センター、1977年。
横山瑞生・王留満安舎・前田久仁子『タオの流れにのって 東洋医学の一から九まで』谷口書店、2001年。
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